北海道撮影行 3日目 夕
2014年6月5日 鉄道と旅行
内浦湾の旅。
・鉄道旅行、ふたたび
13時51分発の長万部行に乗り込む。あまりコンコースでのんびりしている場合ではなく、始発なのだから早めにホームに降りて席を確保すべきだった。中間試験期間なのか、車内は高校生だらけである。しかし北舟岡と伊達紋別でその多くがぞろぞろと下車していき、混雑は束の間であった。そして豊浦を過ぎると学生はいなくなる。天候は快晴。海側の窓を開け、内浦湾の爽快な景色を楽しむ。3日間車で走り回った区間を改めて列車で通っているわけだが、グラデーションとともに変化してゆく文化圏、生活圏の濃度を肌で感じ取ることができるのは、やはり鉄道旅行ならではの面白さだ。
礼文の次は小幌。言わずと知れた秘境駅である。かつては信号場として誕生し、なぜか駅に昇格された。この列車は停車するようだが、当然ながら乗降はゼロ。ここを使うのは、ヲタか釣り人くらいらしい。三方を山に囲まれ、残る一方は海岸へと続く急峻な崖になっている。国道からの道はなく、鉄道でなければ訪問できない。前後を長大なトンネルに挟まれた場所で、静狩側は下りが新辺加牛トンネル、上りが幌内トンネルと美利加浜トンネル(おそらくわずかな明かり区間を挟んで連続しているのだろう)。そして礼文側は下りが礼文華山トンネル、上りが新礼文華山トンネルという名前になっている。小幌を出ると、一瞬だけ海がのぞく区間が3~4か所あった。上り線は数本のトンネルが継ぎはぎされているようだ。しかし、幌内、美利加浜の次から名前が分からない。地図によると少なくともあと3本はあるように見える。
・大カーブ
静狩で降りたのは他でもない、夕方にやって来るトワイライトエクスプレスを狙うためだ。明朝には青森の地を踏む必要があるのだが、函館へ向かう途中で時間的にも場所的にも丁度良いのがここであった。事前に予習していたのと同じようなアングルを探すのに一苦労だったが、なんとか編成をすっきり収められそうな場所にたどり着いた。しかし、機関車も入れると12両の列車がどこまで入るのか、予測は難しい。非電化区間特有の難しさである。絶対に失敗するわけにはいかないので、広めに取ってから後でトリミングするという安全策に出る。
結局、編成は余裕で収まってくれた。現場のサイズ感、距離感から何となくそんな気はしていたのだが。すぐ近くまで迫った山の深緑を背景に、青い重連に率いられたこれまたダークグリーンの客車たちが優美にカーブを駆けてくる。DD51という機関車は本当に面白い造形をしていて、微妙な角度によって刻一刻と表情を変えてゆく。良い具合にカーブを巻いてきたタイミングで、本務機、補機ともに右側のフロントガラスがきらりと夕日に輝いた。
・長万部の宵
次の上り普通列車で静狩を去る。18時頃になってようやく、辺りは夕方らしい色になってきた。かつては旭浜という駅が長万部との間にあったのだが8年前に廃駅になり、駅間が10.6kmも空いている。さて、長万部に到着。現代的な駅舎に建て替えられるでもなく、古くからの造りが比較的良く保存されているように思われる。駅前の店はシャッターだらけだったが、予め調べておいた居酒屋は幸い営業していた。かなり新しい店と見え、地元民で意外と賑わっている。値段も良心的で、普通に美味い。そして久々にビールで喉を潤した。この2日間は異常に朝が早く、しかも車を運転するとあり、酒からは離れていたのだった。最後は名物のホッキ釜飯でシメる。
20時前に北斗星がやって来る。丁度良いタイミングで会計を済ませ、駅からさほど離れていない藪の中から後追いで停車を撮影した。さすがに20時ともなると空はほぼ真っ暗になり、客車の車列も色が出ない。代わりに、幾多もの照明を反射してギラギラと黒光りしている。停まっている時間は1分もなかっただろうか、列車はあっという間に行ってしまった。
今夜はフェリーで海峡を渡るので、今のうちに長万部温泉ホテルの日帰り入浴で風呂に入っておく。跨線橋を渡ると、とても温泉街とは呼べないような寂れた風情の町が現れる。あれは、4年前に泊まった四国屋だ。ちょうどこのくらいの時間帯だっただろうか、到着してみるとバスケ部の合宿とかぶっていて、中学生たちが外でバーベキューをしていたことを思い出した。海が近いこともあってか、ここの温泉は塩辛い。浴場は昭和のまま時が止まったかのような旧態依然としたものだったが、昨秋の今村温泉に比べればとくに驚くほどではない。あれは、凄まじい経験だった。湯上りには瓶詰めのコーヒー牛乳を飲む。夜風が何とも心地良い。
かつては、山線と海線が分岐する交通の要衝であった。跨線橋から眺める莫大な構内は、往時の隆盛を物語る。すでに線路が剥がされてしまった用地も見受けられるが、昔は多くの蒸気機関車がたむろしていたのだろう。幾何学的に錯綜する線路と転轍機が青白く光る。
・南下
ぽつんと停まっていた森行の単行列車に八雲まで乗り、そこから先は後を追ってきたスーパー北斗18号に乗り換える。目的地は函館ではなく、一つ手前の五稜郭。フェリーターミナルは市街地から少し離れたところにあるから、こちらの方が近いのだ。荒い運転のタクシーでターミナルに到着したのは23時10分。午後は東室蘭から色々な要素が上手くかみ合い、無事に一日の行程を終えることができた。さて、フェリーの乗船手続きを行わねばならない。
写真
1枚目:トワイライトエクスプレス(@静狩~小幌)
2枚目:スーパー北斗(@静狩)
3枚目:北斗星(@長万部)
3152文字
6/5
東室蘭1351 → 静狩1514
室蘭本線478D キハ40 1701
撮影(静狩~小幌 踏切)
94レ[1537] 貨物 DF200-6
撮影(静狩~小幌 アウトカーブ その1)
2050レ[1556] 貨物 DF200-116
3065レ[1556] 貨物 DF200-112
撮影(静狩~小幌 アウトカーブ その2)
5011D[1638] 特急スーパー北斗11号 キハ281 7連
8002レ[1657] 特急トワイライトエクスプレス DD51 1137+DD51
撮影(静狩)
9092D[1744] 特急北斗92号 キハ283 6連
491D[1746] キハ40 2連
静狩1757 → 長万部1806
室蘭本線480D キハ150-105
夕食(おどろ木)
撮影(長万部)
2レ[1957] 特急北斗星 DD51+DD51
入浴(長万部温泉ホテル)
長万部2119 → 八雲2156
函館本線890D キハ40 1812
八雲2206(+4) → 五稜郭2301(+4)
函館本線5018D 特急スーパー北斗18号 キハ280-101
五稜郭 → 津軽海峡フェリー函館ターミナル
相互交通タクシー 函館500あ1495
・鉄道旅行、ふたたび
13時51分発の長万部行に乗り込む。あまりコンコースでのんびりしている場合ではなく、始発なのだから早めにホームに降りて席を確保すべきだった。中間試験期間なのか、車内は高校生だらけである。しかし北舟岡と伊達紋別でその多くがぞろぞろと下車していき、混雑は束の間であった。そして豊浦を過ぎると学生はいなくなる。天候は快晴。海側の窓を開け、内浦湾の爽快な景色を楽しむ。3日間車で走り回った区間を改めて列車で通っているわけだが、グラデーションとともに変化してゆく文化圏、生活圏の濃度を肌で感じ取ることができるのは、やはり鉄道旅行ならではの面白さだ。
礼文の次は小幌。言わずと知れた秘境駅である。かつては信号場として誕生し、なぜか駅に昇格された。この列車は停車するようだが、当然ながら乗降はゼロ。ここを使うのは、ヲタか釣り人くらいらしい。三方を山に囲まれ、残る一方は海岸へと続く急峻な崖になっている。国道からの道はなく、鉄道でなければ訪問できない。前後を長大なトンネルに挟まれた場所で、静狩側は下りが新辺加牛トンネル、上りが幌内トンネルと美利加浜トンネル(おそらくわずかな明かり区間を挟んで連続しているのだろう)。そして礼文側は下りが礼文華山トンネル、上りが新礼文華山トンネルという名前になっている。小幌を出ると、一瞬だけ海がのぞく区間が3~4か所あった。上り線は数本のトンネルが継ぎはぎされているようだ。しかし、幌内、美利加浜の次から名前が分からない。地図によると少なくともあと3本はあるように見える。
・大カーブ
静狩で降りたのは他でもない、夕方にやって来るトワイライトエクスプレスを狙うためだ。明朝には青森の地を踏む必要があるのだが、函館へ向かう途中で時間的にも場所的にも丁度良いのがここであった。事前に予習していたのと同じようなアングルを探すのに一苦労だったが、なんとか編成をすっきり収められそうな場所にたどり着いた。しかし、機関車も入れると12両の列車がどこまで入るのか、予測は難しい。非電化区間特有の難しさである。絶対に失敗するわけにはいかないので、広めに取ってから後でトリミングするという安全策に出る。
結局、編成は余裕で収まってくれた。現場のサイズ感、距離感から何となくそんな気はしていたのだが。すぐ近くまで迫った山の深緑を背景に、青い重連に率いられたこれまたダークグリーンの客車たちが優美にカーブを駆けてくる。DD51という機関車は本当に面白い造形をしていて、微妙な角度によって刻一刻と表情を変えてゆく。良い具合にカーブを巻いてきたタイミングで、本務機、補機ともに右側のフロントガラスがきらりと夕日に輝いた。
・長万部の宵
次の上り普通列車で静狩を去る。18時頃になってようやく、辺りは夕方らしい色になってきた。かつては旭浜という駅が長万部との間にあったのだが8年前に廃駅になり、駅間が10.6kmも空いている。さて、長万部に到着。現代的な駅舎に建て替えられるでもなく、古くからの造りが比較的良く保存されているように思われる。駅前の店はシャッターだらけだったが、予め調べておいた居酒屋は幸い営業していた。かなり新しい店と見え、地元民で意外と賑わっている。値段も良心的で、普通に美味い。そして久々にビールで喉を潤した。この2日間は異常に朝が早く、しかも車を運転するとあり、酒からは離れていたのだった。最後は名物のホッキ釜飯でシメる。
20時前に北斗星がやって来る。丁度良いタイミングで会計を済ませ、駅からさほど離れていない藪の中から後追いで停車を撮影した。さすがに20時ともなると空はほぼ真っ暗になり、客車の車列も色が出ない。代わりに、幾多もの照明を反射してギラギラと黒光りしている。停まっている時間は1分もなかっただろうか、列車はあっという間に行ってしまった。
今夜はフェリーで海峡を渡るので、今のうちに長万部温泉ホテルの日帰り入浴で風呂に入っておく。跨線橋を渡ると、とても温泉街とは呼べないような寂れた風情の町が現れる。あれは、4年前に泊まった四国屋だ。ちょうどこのくらいの時間帯だっただろうか、到着してみるとバスケ部の合宿とかぶっていて、中学生たちが外でバーベキューをしていたことを思い出した。海が近いこともあってか、ここの温泉は塩辛い。浴場は昭和のまま時が止まったかのような旧態依然としたものだったが、昨秋の今村温泉に比べればとくに驚くほどではない。あれは、凄まじい経験だった。湯上りには瓶詰めのコーヒー牛乳を飲む。夜風が何とも心地良い。
かつては、山線と海線が分岐する交通の要衝であった。跨線橋から眺める莫大な構内は、往時の隆盛を物語る。すでに線路が剥がされてしまった用地も見受けられるが、昔は多くの蒸気機関車がたむろしていたのだろう。幾何学的に錯綜する線路と転轍機が青白く光る。
・南下
ぽつんと停まっていた森行の単行列車に八雲まで乗り、そこから先は後を追ってきたスーパー北斗18号に乗り換える。目的地は函館ではなく、一つ手前の五稜郭。フェリーターミナルは市街地から少し離れたところにあるから、こちらの方が近いのだ。荒い運転のタクシーでターミナルに到着したのは23時10分。午後は東室蘭から色々な要素が上手くかみ合い、無事に一日の行程を終えることができた。さて、フェリーの乗船手続きを行わねばならない。
写真
1枚目:トワイライトエクスプレス(@静狩~小幌)
2枚目:スーパー北斗(@静狩)
3枚目:北斗星(@長万部)
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