北海道撮影行 2日目 昼
2014年6月4日 鉄道と旅行
絵鞆半島をゆく。
・仮眠
道の駅とようらの駐車場に車を停めて、2時間ほど車内で仮眠をとることにした。今回は早朝と夕方、そして夜に予定が盛りだくさんという行程なので、昼間は本当に暇である。事故を起こさないためにも、しばし休もう。日陰で窓を少しばかり開け、虫の声を聴きながら束の間の眠りに落ちる。そういえば、今朝漫画喫茶を後にした頃から下痢がひどい。もしや、夜食で頼んだあのお世辞にも美味いとは言い難い牛丼に何か入っていたのだろうか。
・カレーラーメンの再来
正午前に活動を再開。日がだいぶ高くなったようで、車内は暑くなっていた。とりあえず室蘭に戻って昼食をとる。室蘭といえば、カレーラーメン。白鳥大橋を通って絵鞆半島に渡り、終着駅近くの商店街にある「味の大王」本店を訪れた。何でも、カレーラーメンの元祖らしい。この独特のご当地グルメといえば、4年前、室蘭港に面したエンルムマリーナで初めて食したときの記憶が蘇る。そういえば変な歌も流れていたな。しかし当時の旅行記を読み返してみたら、何と食レポが省略されていた。さて、出てきたラーメンは黄褐色というよりも緑褐色に近く、スープの辺縁に透見する油は、表現が極めて不適切で恐縮この上ないが、胆汁のような色をしている。あるいはもしやこの緑色は、昨夜見た工場夜景の蛍光灯の色を象徴しているのではないかという議論になり、ひとしきり盛り上がったのだった。麺は太いちぢれ麺で、濃厚なスープに実によく絡む。ボリューム感も満点で、全体としてしっかりと腹におさまる。美味しい昼食であった。また訪れることがあったら、必ず食べたい。
・測量山
昼食後は測量山の展望台に登る。絵鞆半島は総じて急峻な地形をしていて、市街地は狭い平地にへばりつくようにして展開している他、山を切り開いたところにも段々畑のように広がっている。軽自動車には苦しい坂道をぐいぐい登っていくと、程なくして目的地に到着した。ここは半島の最高地点で、テレビ局の電波塔設備が置かれている。展望台への階段は今一つ分かりにくい位置にあるので、駐車場からの何ともいえない景観だけを眺めて帰る人もいるように思われる。広場には199.6mの三角点も置かれていた。200mにわずかに届かないのが惜しい。
灯台のような形をしたデッキからの眺めは絶景。東側には室蘭の市街地。手前は住宅地で、色とりどりの屋根が面白い。今ちょうど、小さな貨物船が入港してきた。視線を遠くへずらしていくと、街が山にすっぽりと抱かれるような形で、絵鞆半島は北東方向へ軽く湾曲しながら広大な陸地に身を埋める。半島の南岸はほとんど切り立った崖なのだが、唯一小さな入り江が港湾として開発されていて、そこは室蘭駅前から続く市街地と連続しているのだった。しかし西の方角は依然として山が深く、平地を形成することなく断崖が一気に太平洋へと落ち込んでいる。一方、北側は完全に工業地帯である。優雅に翼を広げる白鳥大橋の向こうには、JX日鉱日石。昨夜とは打って変わって、プラントの姿は逆光の中に鈍く霞んでいる。また室蘭港の一等地だろうか、湾の最奥には新日鉄住金の赤茶けた工場が間歇的に白い水蒸気の煙を吐き出している。工場、街、自然が三位一体となってコンパクトに収まった姿は、実に面白い。少なくとも叙景という点でこれほど魅力的な街なら、映画の一本や二本くらい撮れそうなものである。
・観光道路
展望台の後は、森の中を通る測量山観光道路を走ることにした。一部は未舗装のところもある。ただの山道かと思っていたら、ふいに景色が開けて数多くの絶景ポイントが唐突に登場してくるので驚いた。とくにマスイチセの断崖と海岸、ハルカラモイの急峻な入り江は圧巻である。それぞれアイヌ語で、「ウミネコの・家」「食料・とる・入り江」の意味だという。天候も素晴らしく、ありとあらゆる色が眩しく視界に飛び込んでくる。昨夏、南イングランドのセブン・シスターズを訪れた際の旅行記でも書いたように思うが、断崖は全ての文脈がいきなり断絶するから面白い。また、眼前の絶景に向かってあと数歩踏み出せば死の世界に入るという異常な状況をふと思い出すとき、背筋が凍るのだ。観光道路の最後は絵鞆岬。半島の突端、湾の入口なので開放的な景色である。広場には、先住民の慰霊碑があった。室蘭開発の先駆者たち、アイヌ民族の鎮魂の碑だそうだ。暗い歴史を今に伝えるものなのだろうか。
・祝津展望台
最後は、昨夜も訪れた祝津へ。そろそろ、日も西に傾いてきたようだ。
写真
1枚目:測量山展望台より
2枚目:マスイチセ
3枚目:絵鞆岬
2159文字
6/4
レンタカーによる移動
仮眠(道の駅とようら)
昼食(味の大王 室蘭本店)
室蘭観光(測量山展望台、測量山観光道路)
・仮眠
道の駅とようらの駐車場に車を停めて、2時間ほど車内で仮眠をとることにした。今回は早朝と夕方、そして夜に予定が盛りだくさんという行程なので、昼間は本当に暇である。事故を起こさないためにも、しばし休もう。日陰で窓を少しばかり開け、虫の声を聴きながら束の間の眠りに落ちる。そういえば、今朝漫画喫茶を後にした頃から下痢がひどい。もしや、夜食で頼んだあのお世辞にも美味いとは言い難い牛丼に何か入っていたのだろうか。
・カレーラーメンの再来
正午前に活動を再開。日がだいぶ高くなったようで、車内は暑くなっていた。とりあえず室蘭に戻って昼食をとる。室蘭といえば、カレーラーメン。白鳥大橋を通って絵鞆半島に渡り、終着駅近くの商店街にある「味の大王」本店を訪れた。何でも、カレーラーメンの元祖らしい。この独特のご当地グルメといえば、4年前、室蘭港に面したエンルムマリーナで初めて食したときの記憶が蘇る。そういえば変な歌も流れていたな。しかし当時の旅行記を読み返してみたら、何と食レポが省略されていた。さて、出てきたラーメンは黄褐色というよりも緑褐色に近く、スープの辺縁に透見する油は、表現が極めて不適切で恐縮この上ないが、胆汁のような色をしている。あるいはもしやこの緑色は、昨夜見た工場夜景の蛍光灯の色を象徴しているのではないかという議論になり、ひとしきり盛り上がったのだった。麺は太いちぢれ麺で、濃厚なスープに実によく絡む。ボリューム感も満点で、全体としてしっかりと腹におさまる。美味しい昼食であった。また訪れることがあったら、必ず食べたい。
・測量山
昼食後は測量山の展望台に登る。絵鞆半島は総じて急峻な地形をしていて、市街地は狭い平地にへばりつくようにして展開している他、山を切り開いたところにも段々畑のように広がっている。軽自動車には苦しい坂道をぐいぐい登っていくと、程なくして目的地に到着した。ここは半島の最高地点で、テレビ局の電波塔設備が置かれている。展望台への階段は今一つ分かりにくい位置にあるので、駐車場からの何ともいえない景観だけを眺めて帰る人もいるように思われる。広場には199.6mの三角点も置かれていた。200mにわずかに届かないのが惜しい。
灯台のような形をしたデッキからの眺めは絶景。東側には室蘭の市街地。手前は住宅地で、色とりどりの屋根が面白い。今ちょうど、小さな貨物船が入港してきた。視線を遠くへずらしていくと、街が山にすっぽりと抱かれるような形で、絵鞆半島は北東方向へ軽く湾曲しながら広大な陸地に身を埋める。半島の南岸はほとんど切り立った崖なのだが、唯一小さな入り江が港湾として開発されていて、そこは室蘭駅前から続く市街地と連続しているのだった。しかし西の方角は依然として山が深く、平地を形成することなく断崖が一気に太平洋へと落ち込んでいる。一方、北側は完全に工業地帯である。優雅に翼を広げる白鳥大橋の向こうには、JX日鉱日石。昨夜とは打って変わって、プラントの姿は逆光の中に鈍く霞んでいる。また室蘭港の一等地だろうか、湾の最奥には新日鉄住金の赤茶けた工場が間歇的に白い水蒸気の煙を吐き出している。工場、街、自然が三位一体となってコンパクトに収まった姿は、実に面白い。少なくとも叙景という点でこれほど魅力的な街なら、映画の一本や二本くらい撮れそうなものである。
・観光道路
展望台の後は、森の中を通る測量山観光道路を走ることにした。一部は未舗装のところもある。ただの山道かと思っていたら、ふいに景色が開けて数多くの絶景ポイントが唐突に登場してくるので驚いた。とくにマスイチセの断崖と海岸、ハルカラモイの急峻な入り江は圧巻である。それぞれアイヌ語で、「ウミネコの・家」「食料・とる・入り江」の意味だという。天候も素晴らしく、ありとあらゆる色が眩しく視界に飛び込んでくる。昨夏、南イングランドのセブン・シスターズを訪れた際の旅行記でも書いたように思うが、断崖は全ての文脈がいきなり断絶するから面白い。また、眼前の絶景に向かってあと数歩踏み出せば死の世界に入るという異常な状況をふと思い出すとき、背筋が凍るのだ。観光道路の最後は絵鞆岬。半島の突端、湾の入口なので開放的な景色である。広場には、先住民の慰霊碑があった。室蘭開発の先駆者たち、アイヌ民族の鎮魂の碑だそうだ。暗い歴史を今に伝えるものなのだろうか。
・祝津展望台
最後は、昨夜も訪れた祝津へ。そろそろ、日も西に傾いてきたようだ。
写真
1枚目:測量山展望台より
2枚目:マスイチセ
3枚目:絵鞆岬
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