曇天の街を散策。
・街歩き
今日は地図を片手に一日ぶらぶら歩く。街の構造は地図にだいたい書いてあるとはいえ、実際に踏査しないことには感覚をつかむことができない。撮影行でもいえることだが、足で歩くということがいかに重要かをしばしば感じる日々である。外はずいぶんと寒い。
・バッキンガム宮殿
朝靄の残るグリーン・パーク(Green Park)の小道を歩いていく。スイセンの花が咲いていたり、住みついているリスが走り回っていたりする。500mほど歩くと公園を横切って、バッキンガム宮殿が見えてくる。『007 ダイ・アナザー・デイ』でダイヤモンド王、グスタフ・グレーブスが落下傘で降下したシーンが妙に印象に残っているが、宮殿は意外にも小ぢんまりしている。正門から北東に延びる道路、モール(The Mall)は整然としていて美しい。ここは観光客の人だかりができていて、あまり落ち着いた雰囲気ではない。しかし騎馬警官がいたり、今日は衛兵の交代式が行われるらしくウェリントン(Wellington)兵舎から衛兵たちが隊列を組んで歩いてきたりと、新鮮な光景が面白い。伝統を守るのは、大変なことである。セント・ジェームズ・パーク(St. James’ Park)の南縁をなぞるバードケージ・ウォーク(Birdcage Walk)を東進していくと、ウェストミンスター・ブリッジとビッグ・ベンが見えてくるが、橋を渡る前に、まずは寺院を訪れる。
・ウェストミンスター寺院
1000年近くにわたって歴代の王の戴冠式が行われている、英国王室ゆかりの寺院である。世界史の素養がなさすぎて誰が誰だか皆目分からないが、とにかく歴代の王族の墓碑がこれでもかというくらい寺院の中にあって驚く。寺院内部の全体的な印象としては、壮麗ではあるが華美ではない。クワイア(choir;聖歌隊席;パンフレットに記載されたquireは古い綴りか)から眺める聖域や天井なども、写真で見るのとは違ってあまり大きな広がりを感じない。もしかしたら観光客が多すぎて相対的に建物が狭く感じるだけのなかもしれないが、雑に言えば「幅が狭く、奥が深い」。その「最奥」に位置するヘンリー7世のチャペルは息を呑む美しさであった。数々の騎士の紋章が両側の壁に整然と配列していて、圧巻の色彩。寺院内での写真撮影が禁じられているのが残念である。
その後、回廊やチャプター・ハウス(Chapter House)、博物館を見て回り、最後に身廊の隅に置かれた戴冠式の椅子を見て、外に出る。ここは寺院というよりはむしろ王族の霊廟で、英国王室の伝統がこの空間に密に凝縮されているような印象を受ける。寺院の歴史自体も大したもので、クワイアの入口にある歴代のパイプオルガン奏者の名簿にも脈々たる歴史を感じる。
・国会議事堂、ビッグ・ベン
ウェストミンスター・ブリッジから眺める国会議事堂とビッグ・ベンはロンドンを代表する景観だが、今日は陰鬱な曇天で全く色が出ず、残念ながら景色に映えない。また夜に訪れるとしよう。旧ロンドン市庁舎裏手にあるスタバに入って無料WiFiに接続。各方面のメールを処理すると同時に、4日後からの宿を予約。元々はイングランド南部を周遊しつつ、ライ(Rye)とワイト(Wight)島に泊まる予定だったが、この先あまり天候が勝れなさそうなのと、最終日のセント・パンクラス駅でのスーツケースの引取りが面倒そうなのとで、各地をロンドンからの日帰りで訪れる計画へと変更した。
・黄昏
ロイヤル・フェスティバル・ホール近くのSTRADAというイタリア料理チェーン店でかなり遅い昼食をとり、再びテムズ河を渡ってチャリング・クロス(Charing Cross)駅に至る。駅前のトラファルガー広場からナショナル・ギャラリーの建物を見た後、ストランド(Strand)という大通りを東進してホーボーン(Holborn)方面へと歩く。この界隈は劇場街で、人通りも多い。サマセット・ハウスで休憩した後、王立裁判所を見て、テンプル(Temple)教会を目指したが、どうやら今日は閉まっているらしい。気が付けば日が暮れている。
歩みを北西に切り替えてチャイナタウンの方へ向かうと、賑やかなコヴェント・ガーデン(Covent Garden)に着く。後で調べて分かったが、『マイ・フェア・レディ』で花売りのイライザと言語学者ヒギンズ教授が出会う場所としてここが設定されているらしい。この映画は中3だか高1だかの英語の時間に観させられた記憶があるw レスター・スクエア(Leicester Square)まで来ると完全な繁華街で、劇場やカジノが乱立して騒々しい。チャイナタウンはピカディリー・サーカス(Piccadilly Circus)との間に位置し、その一角だけ漢字のネオンが煌めく別世界となっている。凍頂大酒家という店に入って夕食をとる。
・夜景
一旦宿に戻った後、夜景撮影に出かける。ウェリントン・アーチ(Wellington Arch)を経由して昼間訪れたバッキンガム宮殿に向かうと、人もまばらで、実に撮りやすい。その後、昼と同じルートをたどってウェストミンスター・ブリッジまで歩く。今夜のハイライトはやはりビック・ベンで、時計塔と自動車の光跡を何とか上手く絡められないか、試行錯誤を重ねる。ダブルデッカーのバスが通過すると、赤い尾灯と白い室内灯が豪華に画面を彩るので絵になるのだが、なかなかタイミングが難しい。極寒の中でカメラにへばりついていたら、いつの間にか1時間半も経っていた。風邪を引いても仕方ないので、そろそろ帰るとしよう。
写真
1枚目:ウェストミンスター寺院
2枚目:ストランドの風景
3枚目:夜の国会議事堂とビッグ・ベン
2760文字
3/9
徒歩による移動
バッキンガム(Buckingham)宮殿、ウェストミンスター(Westminster)寺院、国会議事堂、ビッグ・ベン(Big Ben)、トラファルガー(Trafalgar)広場、王立裁判所、サマセット・ハウス(Somerset House)
ロンドン泊
Flemings Mayfair
・街歩き
今日は地図を片手に一日ぶらぶら歩く。街の構造は地図にだいたい書いてあるとはいえ、実際に踏査しないことには感覚をつかむことができない。撮影行でもいえることだが、足で歩くということがいかに重要かをしばしば感じる日々である。外はずいぶんと寒い。
・バッキンガム宮殿
朝靄の残るグリーン・パーク(Green Park)の小道を歩いていく。スイセンの花が咲いていたり、住みついているリスが走り回っていたりする。500mほど歩くと公園を横切って、バッキンガム宮殿が見えてくる。『007 ダイ・アナザー・デイ』でダイヤモンド王、グスタフ・グレーブスが落下傘で降下したシーンが妙に印象に残っているが、宮殿は意外にも小ぢんまりしている。正門から北東に延びる道路、モール(The Mall)は整然としていて美しい。ここは観光客の人だかりができていて、あまり落ち着いた雰囲気ではない。しかし騎馬警官がいたり、今日は衛兵の交代式が行われるらしくウェリントン(Wellington)兵舎から衛兵たちが隊列を組んで歩いてきたりと、新鮮な光景が面白い。伝統を守るのは、大変なことである。セント・ジェームズ・パーク(St. James’ Park)の南縁をなぞるバードケージ・ウォーク(Birdcage Walk)を東進していくと、ウェストミンスター・ブリッジとビッグ・ベンが見えてくるが、橋を渡る前に、まずは寺院を訪れる。
・ウェストミンスター寺院
1000年近くにわたって歴代の王の戴冠式が行われている、英国王室ゆかりの寺院である。世界史の素養がなさすぎて誰が誰だか皆目分からないが、とにかく歴代の王族の墓碑がこれでもかというくらい寺院の中にあって驚く。寺院内部の全体的な印象としては、壮麗ではあるが華美ではない。クワイア(choir;聖歌隊席;パンフレットに記載されたquireは古い綴りか)から眺める聖域や天井なども、写真で見るのとは違ってあまり大きな広がりを感じない。もしかしたら観光客が多すぎて相対的に建物が狭く感じるだけのなかもしれないが、雑に言えば「幅が狭く、奥が深い」。その「最奥」に位置するヘンリー7世のチャペルは息を呑む美しさであった。数々の騎士の紋章が両側の壁に整然と配列していて、圧巻の色彩。寺院内での写真撮影が禁じられているのが残念である。
その後、回廊やチャプター・ハウス(Chapter House)、博物館を見て回り、最後に身廊の隅に置かれた戴冠式の椅子を見て、外に出る。ここは寺院というよりはむしろ王族の霊廟で、英国王室の伝統がこの空間に密に凝縮されているような印象を受ける。寺院の歴史自体も大したもので、クワイアの入口にある歴代のパイプオルガン奏者の名簿にも脈々たる歴史を感じる。
・国会議事堂、ビッグ・ベン
ウェストミンスター・ブリッジから眺める国会議事堂とビッグ・ベンはロンドンを代表する景観だが、今日は陰鬱な曇天で全く色が出ず、残念ながら景色に映えない。また夜に訪れるとしよう。旧ロンドン市庁舎裏手にあるスタバに入って無料WiFiに接続。各方面のメールを処理すると同時に、4日後からの宿を予約。元々はイングランド南部を周遊しつつ、ライ(Rye)とワイト(Wight)島に泊まる予定だったが、この先あまり天候が勝れなさそうなのと、最終日のセント・パンクラス駅でのスーツケースの引取りが面倒そうなのとで、各地をロンドンからの日帰りで訪れる計画へと変更した。
・黄昏
ロイヤル・フェスティバル・ホール近くのSTRADAというイタリア料理チェーン店でかなり遅い昼食をとり、再びテムズ河を渡ってチャリング・クロス(Charing Cross)駅に至る。駅前のトラファルガー広場からナショナル・ギャラリーの建物を見た後、ストランド(Strand)という大通りを東進してホーボーン(Holborn)方面へと歩く。この界隈は劇場街で、人通りも多い。サマセット・ハウスで休憩した後、王立裁判所を見て、テンプル(Temple)教会を目指したが、どうやら今日は閉まっているらしい。気が付けば日が暮れている。
歩みを北西に切り替えてチャイナタウンの方へ向かうと、賑やかなコヴェント・ガーデン(Covent Garden)に着く。後で調べて分かったが、『マイ・フェア・レディ』で花売りのイライザと言語学者ヒギンズ教授が出会う場所としてここが設定されているらしい。この映画は中3だか高1だかの英語の時間に観させられた記憶があるw レスター・スクエア(Leicester Square)まで来ると完全な繁華街で、劇場やカジノが乱立して騒々しい。チャイナタウンはピカディリー・サーカス(Piccadilly Circus)との間に位置し、その一角だけ漢字のネオンが煌めく別世界となっている。凍頂大酒家という店に入って夕食をとる。
・夜景
一旦宿に戻った後、夜景撮影に出かける。ウェリントン・アーチ(Wellington Arch)を経由して昼間訪れたバッキンガム宮殿に向かうと、人もまばらで、実に撮りやすい。その後、昼と同じルートをたどってウェストミンスター・ブリッジまで歩く。今夜のハイライトはやはりビック・ベンで、時計塔と自動車の光跡を何とか上手く絡められないか、試行錯誤を重ねる。ダブルデッカーのバスが通過すると、赤い尾灯と白い室内灯が豪華に画面を彩るので絵になるのだが、なかなかタイミングが難しい。極寒の中でカメラにへばりついていたら、いつの間にか1時間半も経っていた。風邪を引いても仕方ないので、そろそろ帰るとしよう。
写真
1枚目:ウェストミンスター寺院
2枚目:ストランドの風景
3枚目:夜の国会議事堂とビッグ・ベン
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