東北旅行 序章
東北旅行 序章
東北旅行 序章
記憶を紐解く作業を始めるとしよう。
3/2 → 3/3
上野2115 → 二ツ井808
東北本線、高崎線、上越線、信越本線、羽越本線、奥羽本線2021レ
特急あけぼの オハネフ24 7

厳冬の旅路
3月初旬、北国はまだ雪に閉ざされている。北斗星、カシオペア、トワイライトエクスプレス、はまなすの運休が次々と決定していく中、どういうわけかあけぼのだけが生き残った。13番線でのすり氏と待ち合わせ、青森行の列車に乗り込む。この、寝台客車のデッキに最初の一歩を踏み入れる瞬間は、日常と非日常の境界線をまたぐ瞬間でもある。

この列車には何度も乗っているとはいえ、毎回飽きることがない。窓外に目をやれば都会の灯りが後方へと消し飛んでいく。徐々に移り変わる沿線の表情を愉しみながら、宵が更ける。

上越線に入る頃になると雪が目立つようになり、運転停車した水上駅は猛吹雪にさらされていた。よくぞこの天候で走らせてくれたものだ。轍の音は、まさに柔らかいクッションの上を走っているような響きへと変容し、線路に吹き積もった雪を握りしめている感覚が足元から伝わってくるかのようだ。視覚、聴覚、振動覚が一体となって、列車の旅の記憶が形作られていく。やがて列車は「国境の長いトンネル」、清水トンネルに入る。途端に、ジョイント音が硬質な響きに変わる。突如として車窓に現れる蛍光灯の列は、地下深くに埋められたトンネル駅、土合のホームである。その不気味な姿を横目に、眠りについた。

目覚めると、列車は薄明りの日本海を横目に秋田へ向けて羽越本線を北上している。13番線で足を踏み入れたときと同じ客車の空間が、夜通し移動してはるか遠隔の地へとやって来ている。時空間の連続性が連綿と保たれながらも、一夜にして景色が、風土が、文化が変わる。まさにここに夜行列車の旅の面白さを見出すのだ。二ツ井という小さな駅で列車を降りた。

写真
1枚目:旅の始まり(@上野)
2枚目:寒々しい日本海が車窓に展開する
3枚目:下車(@二ツ井)

940文字

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