厳冬の青森には大雪が舞う。
・グランクラスの旅
今春のダイヤ改正で姿を消す特急日本海、その最後の勇姿を北東北の地で網膜と撮像素子に焼き付けようと思い立ったのがこの旅行の始まりである。まずは東北新幹線で青森入りする。東京から3時間あまりで着いてしまうとは、本当に便利になったものだ。
せっかくなので今回はグランクラスを取ってみた。軽食が出る上に、アルコールを含めた飲み物が飲み放題。座席も至って快適で、2+1列というゆとりある配置のため周りの乗客の存在をあまり意識することがない。絨毯は褐色、天井の照明は線路と垂直の方向に配されていて鉄道車両にしては珍しい。荷物の収納棚は航空機のそれと同等のもの。トンネルに入れば、窓枠を輪郭する間接照明が浮き上がって美しい。食事の後は気ままに飲み物を頼みつつ、時刻表に読み入ったり、フルにリクライニングして軽く眠ったり。何とも贅沢な移動時間を過ごす。そうこうしていれば3時間はあっという間で、新青森に到着となった。新幹線の定時性には毎度のことながら驚嘆する。
・厳冬の青森市街
到着前の車内放送で、スーパー白鳥が運休になっていることを知る。どうやら津軽海峡線は大雪の影響で昨日からまともに動いていないらしい。今日は津軽線油川の近くで海峡をくぐる貨物列車を撮影しようかと思っていたが、走っていないのではどうにもならない。豊盃の特別純米酒と田酒の酒粕飴をみやげに買った後、とりあえず宿に荷物を預けてから青森市街をぶらつくことにする。
まずは古川市場でのっけ丼を食べる。予め白飯の丼を買っておき、少しずつネタを買い足しながらオーダーメイドの海鮮丼を作っていくという面白いシステム。なかなか満足である。その後は雪の街をぶらつき、善知鳥(うとう)神社という古い神社にたどり着く。青森発祥の神社ということで、かなり長い歴史をもつようだ。池の水は凍り付き、除雪されていない庭園は深い雪に閉ざされている。神社を去った後は地図を頼りに色々な寺院を回ってみたが、どこの建築もかなり現代風であまり見栄えがしない。そろそろ吹雪になってきたので駅の方へ戻ることにする。アスパムという港に面した観光物産館で少し休憩。窓外に広がる公園も一面の雪景色で、完全にシーズンオフの様相を呈している。さらに駅の方へ歩いて行くと宿の裏手に酒屋があったのでふと立ち寄り、安東水軍の大吟醸を手に入れた。どうやら鰺ヶ沢の酒らしい。最後は桟橋へ向かい、八甲田丸を見に行く。暗澹たる海に向かって鉛色の空から白い雪が舞い降りる様子は、まさに津軽海峡・冬景色。これほどまでに身も心も寒くなったのはいつ以来だろうか。
・青森の夜
風呂に入った後、あけぼのと日本海を撮りに駅へ向かったが、改札口には人だかりができて何やらざわついている。見れば、奥羽本線が全面運休という昼間よりもひどい状況になっていた。想定外の大雪で、青森~弘前間での除雪作業が全然追い付かないのだという。普通列車は続々と運休が決まり、発車時刻を30分以上すぎてようやくあけぼのの運休も決まった。日本海がウヤになるのも時間の問題だろうということで、撮影は諦めて飲みに出かける。
昼間目をつけておいた「千や」という居酒屋へ。青森の地酒が一通り揃っている。津軽じょっぱりを熱燗で頂いた後、田酒、駒泉と続く。駒泉は米の味が豊かで香り高く、特に美味しかった。七戸の酒らしい。ホヤとこのわたの塩辛であるバクライという珍味も食する。外は人通りも少なく極寒の大雪だが、暖かい店に入りこうして一人ゆっくり飲むというのは、何とも冬の旅情に溢れる至福の時間である。
22時前に駅へ戻ってみると、どうやら急行はまなすは発車を1時間遅らせて運転するらしい。未だに走り続ける北の夜行急行。寝台車と座席車の混成編成が機関車に牽かれて津軽海峡をくぐり、北海道の地を走る。今夜の牽引はED79 11。機関車の足回りはすでに雪まみれになっている。客車の塗装はボロボロで、だいぶガタが来ているようだ。凍えながら何枚か写真を撮る。そうこうしていると、何と日本海が入線してくると放送があるではないか。とうに運休が決まっていたものだと思っていたが、噂によれば団体客が入っているため何としても走らせるらしい。出発は所定の時刻から7時間以上遅れ、未明の3時頃になるという。機関車はEF81 114。トワイライト色である。この塗装はどうも青色の客車になじまないし、日本海のヘッドマークも沈んでしまって見栄えがしない。しかしそんな姿もあと2週間あまりで見られなくなるとは、寂しいものである。3番線のはまなすと4番線の日本海が並び、ホームの両側にブルーの車体が佇む豪華な競演のひと時となった。23時42分、はまなすは1時間遅れで青森を発車。日本海だけが残り、凍てつく寒さの中、発車の時を待っていた。
写真
1枚目:E5系はやぶさ(@東京)
2枚目:急行はまなす(@青森)
3枚目:特急日本海(@青森)
2363文字
2/27
東京812 → 新青森1122
東北新幹線1B はやぶさ1号 E514-2
新青森1140(+20) → 青森1147(+20)
奥羽本線2041M 特急つがる1号 クハE751-3
青森観光
青森泊
東横イン青森駅正面口
・グランクラスの旅
今春のダイヤ改正で姿を消す特急日本海、その最後の勇姿を北東北の地で網膜と撮像素子に焼き付けようと思い立ったのがこの旅行の始まりである。まずは東北新幹線で青森入りする。東京から3時間あまりで着いてしまうとは、本当に便利になったものだ。
せっかくなので今回はグランクラスを取ってみた。軽食が出る上に、アルコールを含めた飲み物が飲み放題。座席も至って快適で、2+1列というゆとりある配置のため周りの乗客の存在をあまり意識することがない。絨毯は褐色、天井の照明は線路と垂直の方向に配されていて鉄道車両にしては珍しい。荷物の収納棚は航空機のそれと同等のもの。トンネルに入れば、窓枠を輪郭する間接照明が浮き上がって美しい。食事の後は気ままに飲み物を頼みつつ、時刻表に読み入ったり、フルにリクライニングして軽く眠ったり。何とも贅沢な移動時間を過ごす。そうこうしていれば3時間はあっという間で、新青森に到着となった。新幹線の定時性には毎度のことながら驚嘆する。
・厳冬の青森市街
到着前の車内放送で、スーパー白鳥が運休になっていることを知る。どうやら津軽海峡線は大雪の影響で昨日からまともに動いていないらしい。今日は津軽線油川の近くで海峡をくぐる貨物列車を撮影しようかと思っていたが、走っていないのではどうにもならない。豊盃の特別純米酒と田酒の酒粕飴をみやげに買った後、とりあえず宿に荷物を預けてから青森市街をぶらつくことにする。
まずは古川市場でのっけ丼を食べる。予め白飯の丼を買っておき、少しずつネタを買い足しながらオーダーメイドの海鮮丼を作っていくという面白いシステム。なかなか満足である。その後は雪の街をぶらつき、善知鳥(うとう)神社という古い神社にたどり着く。青森発祥の神社ということで、かなり長い歴史をもつようだ。池の水は凍り付き、除雪されていない庭園は深い雪に閉ざされている。神社を去った後は地図を頼りに色々な寺院を回ってみたが、どこの建築もかなり現代風であまり見栄えがしない。そろそろ吹雪になってきたので駅の方へ戻ることにする。アスパムという港に面した観光物産館で少し休憩。窓外に広がる公園も一面の雪景色で、完全にシーズンオフの様相を呈している。さらに駅の方へ歩いて行くと宿の裏手に酒屋があったのでふと立ち寄り、安東水軍の大吟醸を手に入れた。どうやら鰺ヶ沢の酒らしい。最後は桟橋へ向かい、八甲田丸を見に行く。暗澹たる海に向かって鉛色の空から白い雪が舞い降りる様子は、まさに津軽海峡・冬景色。これほどまでに身も心も寒くなったのはいつ以来だろうか。
・青森の夜
風呂に入った後、あけぼのと日本海を撮りに駅へ向かったが、改札口には人だかりができて何やらざわついている。見れば、奥羽本線が全面運休という昼間よりもひどい状況になっていた。想定外の大雪で、青森~弘前間での除雪作業が全然追い付かないのだという。普通列車は続々と運休が決まり、発車時刻を30分以上すぎてようやくあけぼのの運休も決まった。日本海がウヤになるのも時間の問題だろうということで、撮影は諦めて飲みに出かける。
昼間目をつけておいた「千や」という居酒屋へ。青森の地酒が一通り揃っている。津軽じょっぱりを熱燗で頂いた後、田酒、駒泉と続く。駒泉は米の味が豊かで香り高く、特に美味しかった。七戸の酒らしい。ホヤとこのわたの塩辛であるバクライという珍味も食する。外は人通りも少なく極寒の大雪だが、暖かい店に入りこうして一人ゆっくり飲むというのは、何とも冬の旅情に溢れる至福の時間である。
22時前に駅へ戻ってみると、どうやら急行はまなすは発車を1時間遅らせて運転するらしい。未だに走り続ける北の夜行急行。寝台車と座席車の混成編成が機関車に牽かれて津軽海峡をくぐり、北海道の地を走る。今夜の牽引はED79 11。機関車の足回りはすでに雪まみれになっている。客車の塗装はボロボロで、だいぶガタが来ているようだ。凍えながら何枚か写真を撮る。そうこうしていると、何と日本海が入線してくると放送があるではないか。とうに運休が決まっていたものだと思っていたが、噂によれば団体客が入っているため何としても走らせるらしい。出発は所定の時刻から7時間以上遅れ、未明の3時頃になるという。機関車はEF81 114。トワイライト色である。この塗装はどうも青色の客車になじまないし、日本海のヘッドマークも沈んでしまって見栄えがしない。しかしそんな姿もあと2週間あまりで見られなくなるとは、寂しいものである。3番線のはまなすと4番線の日本海が並び、ホームの両側にブルーの車体が佇む豪華な競演のひと時となった。23時42分、はまなすは1時間遅れで青森を発車。日本海だけが残り、凍てつく寒さの中、発車の時を待っていた。
写真
1枚目:E5系はやぶさ(@東京)
2枚目:急行はまなす(@青森)
3枚目:特急日本海(@青森)
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