冬の京都を歩く。
・朝
グランヴィア京都は駅と一体である上に高級感も漂い、なかなか良い宿であった。京都駅ビルの斬新な建築には賛否両論あるだろうが、全体を統一する暗い灰色が意外と似合っている。
朝食をとった後、とりあえず荷物を置くために東山七条にある今晩の宿、東山閣へと向かう。京都市バスに乗るのは高2の地域研究以来か。しかも当時の班員が3人、それぞれの所属を新たにして4年後の京都でふたたび一堂に会するとはなかなか感慨深くもある。
・建仁寺
女子部員が明日の振袖の試着を行っている間、我々は適当に周囲を観光する。昼は祇園で食べることになっていたので、そのすぐ南の一角に位置する京都最古の禅寺、建仁寺を訪れる。観光客で混んでいるわけでもなく、ゆっくりと境内を見て回る。本坊の庭も良いが、法堂の双龍図は圧巻。神社仏閣の歴史とか重厚感に関していえば、京都と関東とでは格の違いを感じる。碁盤目の通りをふと入った至るところにこうした立派な建築が佇んでいる様は、さすが千年の古都といったところである。
・祇園
歴史的町並の保存された花見小路通りは、すでに週末の賑やかな様相を呈している。車の往来がかなりあるのが難点だがそれでも十分な風情があり、昨冬に訪れた飛騨の小京都、高山の町並を思い出す。ただ、ここは高山とは違って露骨な観光地化がされていないのが良い。昼までまだ少し時間があり、試着も長引いているようなので、喫茶店に入って抹茶セーキを頂く。こうして外の往来を眺めながら時間をつぶすのもなかなか楽しい。
正午を半時間ほど過ぎた頃に女子部員と無事合流し、「くらした」という懐石料理の店へ行く。京料理を手軽に楽しむということで出発前の晩に下調べしてあったところで、昨夜の新幹線のデッキで予約を入れたのだった。花見小路から一本入った趣ある町屋風の店構えで、入り口をくぐると石畳のエントランスが奥まで続いている。通されたのは2階の個室で、8人にはちょうど良い広さである。雰囲気がなかなか良い。湯豆腐膳を注文し、次々と運ばれてくる品々に舌鼓を打つ。料理は期待以上のボリュームで、のんびりと食べていたら良い具合の満腹感。最後に集合写真を撮影し、店を後にした。一人旅で美味いものをしんみり食べるのも良いが、こうして大勢で会食というのにも替えがたい楽しみがある。
・銀閣
すでに14時半を回っているが、東山の慈照寺銀閣へ向かう。寺まで続く緩やかな坂道、立ち並ぶ土産物屋や食堂を眺めていると、4年前の5月の記憶が呼び戻される。あの時は雨が降っていて、何処かの食堂でにしんそばを食べたのだった。観光客はそこそこ入っているが、十分落ち着いて回れる。4年前はただ回るだけで終わってしまったが、改めて来てみると着眼点が少なからず変わっていることに気が付く。ただ、苔の地肌は何度見ても静謐な感じがある。
・哲学の道
南禅寺まで続く哲学の道を歩き始めたが、真冬なので木々の装いは寂しく、寒く乾いた雰囲気を感じるのみである。雪でも降っていればしっとりとしてまた違ったのかもしれないが、春の爛漫に思いを馳せながらとぼとぼと歩く。シーズン中はきっと大混雑することだろう。日没も近くいよいよ冷え込んできたので、途中でバス通りに戻って宿へ帰ることにする。
・ふたたび祇園
グランヴィア京都に比べると東山閣はずいぶん見劣りするが、夕食はなかなか良かった。食後はふたたび外へ繰り出す。祇園のバーに行くことになったが、如何せん大人数なので一軒目は門前払い。次へ向かうべく、妖艶にライトアップされた白川南通りを東へ歩き、花見小路通りに交わる。夜の川沿いの町並は、窓から漏れる料理屋の灯りや、ぼうっと浮かび上がる柳の並木と相まって美しい。石畳は街灯を静かに反射し、漆黒の川面には窓灯りがちらつく。「祇園359」というバーに入った。テーブルを囲んでゆっくりと話す。地域研究とか修学旅行ではおよそ実現しえなかった旅の楽しみである。
・夜
風呂に入ると、同じく明日の三十三間堂射会に参加すると思われる他校の人々が大挙していた。風呂場はかなり騒がしく、夜の祇園から突如別世界へと引き込まれた感もある。その後は深夜まで晩酌。思いのほか深い話が出た。
写真
1枚目:潮音庭@建仁寺
2枚目:慈照寺銀閣
3枚目:夜の祇園、花見小路通り
2023文字
・朝
グランヴィア京都は駅と一体である上に高級感も漂い、なかなか良い宿であった。京都駅ビルの斬新な建築には賛否両論あるだろうが、全体を統一する暗い灰色が意外と似合っている。
朝食をとった後、とりあえず荷物を置くために東山七条にある今晩の宿、東山閣へと向かう。京都市バスに乗るのは高2の地域研究以来か。しかも当時の班員が3人、それぞれの所属を新たにして4年後の京都でふたたび一堂に会するとはなかなか感慨深くもある。
・建仁寺
女子部員が明日の振袖の試着を行っている間、我々は適当に周囲を観光する。昼は祇園で食べることになっていたので、そのすぐ南の一角に位置する京都最古の禅寺、建仁寺を訪れる。観光客で混んでいるわけでもなく、ゆっくりと境内を見て回る。本坊の庭も良いが、法堂の双龍図は圧巻。神社仏閣の歴史とか重厚感に関していえば、京都と関東とでは格の違いを感じる。碁盤目の通りをふと入った至るところにこうした立派な建築が佇んでいる様は、さすが千年の古都といったところである。
・祇園
歴史的町並の保存された花見小路通りは、すでに週末の賑やかな様相を呈している。車の往来がかなりあるのが難点だがそれでも十分な風情があり、昨冬に訪れた飛騨の小京都、高山の町並を思い出す。ただ、ここは高山とは違って露骨な観光地化がされていないのが良い。昼までまだ少し時間があり、試着も長引いているようなので、喫茶店に入って抹茶セーキを頂く。こうして外の往来を眺めながら時間をつぶすのもなかなか楽しい。
正午を半時間ほど過ぎた頃に女子部員と無事合流し、「くらした」という懐石料理の店へ行く。京料理を手軽に楽しむということで出発前の晩に下調べしてあったところで、昨夜の新幹線のデッキで予約を入れたのだった。花見小路から一本入った趣ある町屋風の店構えで、入り口をくぐると石畳のエントランスが奥まで続いている。通されたのは2階の個室で、8人にはちょうど良い広さである。雰囲気がなかなか良い。湯豆腐膳を注文し、次々と運ばれてくる品々に舌鼓を打つ。料理は期待以上のボリュームで、のんびりと食べていたら良い具合の満腹感。最後に集合写真を撮影し、店を後にした。一人旅で美味いものをしんみり食べるのも良いが、こうして大勢で会食というのにも替えがたい楽しみがある。
・銀閣
すでに14時半を回っているが、東山の慈照寺銀閣へ向かう。寺まで続く緩やかな坂道、立ち並ぶ土産物屋や食堂を眺めていると、4年前の5月の記憶が呼び戻される。あの時は雨が降っていて、何処かの食堂でにしんそばを食べたのだった。観光客はそこそこ入っているが、十分落ち着いて回れる。4年前はただ回るだけで終わってしまったが、改めて来てみると着眼点が少なからず変わっていることに気が付く。ただ、苔の地肌は何度見ても静謐な感じがある。
・哲学の道
南禅寺まで続く哲学の道を歩き始めたが、真冬なので木々の装いは寂しく、寒く乾いた雰囲気を感じるのみである。雪でも降っていればしっとりとしてまた違ったのかもしれないが、春の爛漫に思いを馳せながらとぼとぼと歩く。シーズン中はきっと大混雑することだろう。日没も近くいよいよ冷え込んできたので、途中でバス通りに戻って宿へ帰ることにする。
・ふたたび祇園
グランヴィア京都に比べると東山閣はずいぶん見劣りするが、夕食はなかなか良かった。食後はふたたび外へ繰り出す。祇園のバーに行くことになったが、如何せん大人数なので一軒目は門前払い。次へ向かうべく、妖艶にライトアップされた白川南通りを東へ歩き、花見小路通りに交わる。夜の川沿いの町並は、窓から漏れる料理屋の灯りや、ぼうっと浮かび上がる柳の並木と相まって美しい。石畳は街灯を静かに反射し、漆黒の川面には窓灯りがちらつく。「祇園359」というバーに入った。テーブルを囲んでゆっくりと話す。地域研究とか修学旅行ではおよそ実現しえなかった旅の楽しみである。
・夜
風呂に入ると、同じく明日の三十三間堂射会に参加すると思われる他校の人々が大挙していた。風呂場はかなり騒がしく、夜の祇園から突如別世界へと引き込まれた感もある。その後は深夜まで晩酌。思いのほか深い話が出た。
写真
1枚目:潮音庭@建仁寺
2枚目:慈照寺銀閣
3枚目:夜の祇園、花見小路通り
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