フランス・イタリア旅行 3日目
フランス・イタリア旅行 3日目
フランス・イタリア旅行 3日目
花の都、フィレンツェ。
3/15 → 3/16
Paris Bercy 1854 → Firenze Santa Maria Novella 823(+70)
EN 217 Trainhotel Artesia "PALATINO"

3/16
フィレンツェ(Firenze)観光

フィレンツェ泊
GRAND HOTEL MINERVA

イタリアへ
目覚めると5時半、車窓はまだ真っ暗だが空はわずかに青みを帯びてきた。どうやら雨が降っているようだ。やがて駅に停車。ホームを見渡すとピアセンツァ(Piacenza)とある。定刻では4時44分に到着しているはずなので、1時間近く遅れていることになる。JRなら緊急の放送が入るところだが、とくに何の案内もない。そもそも、車内放送自体がない。

だんだんと明るくなってきた。ピアセンツァを出た列車はパルマ(Parma)、ボローニャ(Bologna)と停車してゆく。そろそろ7時前である。もう日の出の時刻は過ぎただろうか。駅に近付くと近郊電車の姿も目立つようになり、疲れた表情の客がちらほら乗り込んでいる。車両は落書きだらけで汚い。依然、空は雨模様。夜行列車で迎える雨の朝・・・記憶をたどると、高3の9月にはやぶさで門司まで行ったときのことが思い出される。あの時も雨で、しっとりと濡れた憂鬱な山陽路であった。

ボローニャ~フィレンツェ間は山岳線区で、トンネルもかなり多い。線路際まで山が迫る様子や、沿線の植生などが日本とよく似ている。建物の見かけさえ無視すれば上越線とか伯備線とか言われてもおかしくないような気もする。在来線とはいえ列車はかなり飛ばす。さすがは特急列車、120~130は出ているのではなかろうか。標準軌の安定感をここに見る。結局、フィレンツェには70分遅れで到着した。最初から最後まで車内放送はなし。遅延を知らせたり詫びたりすることもなく、車掌は何食わぬ顔。イタリアの鉄道はなかなかテキトーである。

パリから一夜明け、フィレンツェ。

フィレンツェ
荷物を預けてから観光に向かう。本降りの雨なので傘を差しながらカメラを構えるしかないが、雨が少し降るだけでたった1枚の写真を撮るのにもひどく苦労することになる。こういう時は圧倒的にカード型のコンパクトデジカメの方が機動性が高く便利である。しかし折角来たのだから、今日は一眼レフを持って根性で乗り切ろう。サンタ=マリア=ノヴェッラ(Santa Maria Novella)広場は気のせいか小便臭かった。石畳はとにかく水はけが悪い。

フィレンツェは今日だけの観光なので、残念ながら美術館まで回っている余裕がない。とりあえず有名どころを押さえる。まずはドゥオーモ(Duomo)へ向かったが、雨にもかかわらず夥しい数の観光客が傘を差して入口に行列を作っていた。だいぶ込んでいる様子だったのでドゥオーモは諦め、ジョット(Giotto)の鐘楼に登ることにする。それにしてもよくぞここまでの建築を石で造ったものだと思う。ふと観察すると細部の装飾まで凝っていて、ただただ感服する。木の文化に慣れ親しんだ身にとっては極めて異質な眺め、感触、そして香りである。鐘楼の高さは85mあるようで、長い石段を登りつめると最上部に到達し、フィレンツェの町並を一望することができる。赤褐色の屋根が延々と連なる光景は何とも壮観で、建物の間には石畳の路地が縫うように入り組んで走っている。西側には駅も見える。東側のすぐそばにはドゥオーモのクーポラ(Cupola)がどっかりと居座り、なかなかの重量感を醸し出している。傘の群れが濡れた石畳の上をさまよい、やがて散り散りになって路地に吸い込まれてゆく。束の間、雲の切れ間から日が差し込み、赤い町並が一層の輝きを見せた。

鐘楼を降りてからはシニョーリア(Signoria)広場を通って町を南下し、ヴェッキオ(Vecchio)橋に向かう。アルノ(Arno)川に架かるこのフィレンツェ最古の橋の両脇には古い宝飾店が軒を連ねていて、ここもやはり観光客で賑わっている。たしかにフィレンツェの土産物はどれも洗練されていて、ちょっとしたものにもイタリア的なセンスの良さを感じる。帰りがけ、ポルタ=ロッサ(Porta Rossa)通りにある「IL PAPIRO」という店でペンを買った。ここは紙の専門店で、伝統的な模様紙をペン軸に巻いてある。自分は文房具に関しては全くの素人だが、仮にそういうのが好きであれば面白くて仕方がない町かもしれない。オフシーズンであろうはずなのに観光客はかなり多いが、露骨な観光化が行われているわけではなく、古い伝統を美しい形のまま今に伝えているという印象である。今回は旅程の都合で一日しか観光できないのが何とも残念。

ヴェッキオ橋の近くにある「Antico Fattore」というトラットリアで遅めの昼食をとる。客は概ね地元民だが、フランスから観光に来たという老人も居た。パスタやスープなどを頼んだが、どれも美味しい。店員もみな陽気で、いかにもといった感じの明るいイタリア人である。フィレンツェ観光は国際夜行列車アルテシアの副産物的な要素が強かったが、次回来ることがあれば是非イタリアをメインに旅程を組んでみたいものである。

シニョーリア広場でアイスクリームを食べ、町を散策。日が暮れてくると観光客の賑わいもだんだんと落ち着いてきて、石畳の町はもう一つの冷たい表情を見せ始める。黄昏や夜の不気味さは昨日のシャルトルに通じるものがあり、歴史を背負った重みが冷たく心にのしかかってくるかのようである。夜行明けで動き回ったため、この晩はすぐに眠りに落ちてしまった。

写真
1枚目:鐘楼とドゥオーモ
2枚目:フィレンツェの町並
3枚目:ヴェッキオ橋の宝飾店街

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