夕闇迫る

2011年3月2日 弓道
夕闇迫る
巻藁矢で的前を弯いてみる。この試みは初めて。不思議なことに、普段なら離れてしまうようなタイミングでもまったくその気配はないうえ、それどころか、的の姿が鮮明に目に映り、いつまでもじっくりと狙えるし、どこまでも無限に伸びられるような感じさえする。「的に心を開いた」という、かつてない感覚である。ほんとうに、心底驚いた。的前での会、とは実はこういうものだったのかもしれない。

「会」を実感した後はおもむろに矢を戻し、今度は普通の矢で弯いてみる。一本前の巻藁矢での感覚が体に残っているので、的を見据えながら素直に会に入り、やはり的と心が通ったかのような感覚に浸る。「この矢を離して中てねばならない」という深層意識がわずかながらは働いているためか、巻藁矢のときほどの会の深さは感じられないが、それでも、今までの的前からしてみれば比較にならないほど深く、落ち着いた、静謐な、的と心の通った「会」である。そして、的中のために弯いているのではなくて、的中とはあくまで結果、的と心を通わせた結果なのだと実感する。

普段は「普通の矢は離れて的に中ることを使命としている」という固定観念が、心の奥底を冷たい地下水のごとく脈々と流れているがゆえに、その冷たさが体幹を揺るがし、筋肉をこわばらせ、心を臆病にさせ、しまいには心が的から閉ざされてしまう。こうなると心は的を見ようとしないし、的と目を合わせることを何よりもおびえるようになる。逆に「巻藁矢を巻藁以外に離してはいけない」「巻藁矢は巻藁のためだけのものであって、巻藁以外に離すことは想定されていない」といったような固定観念が、かえって心を開かせる方向に働いたのかもしれない。

いかにして深層意識を操るか。巻藁矢に秘められた力。

写真:特急サンダーバード@加賀笠間~美川
そろそろ暗くなってきました。

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