別れの春は近い。ふたたび北陸を訪れよう。
・急行能登
旅立ちは能登である。21世紀の10年目にして未だに残る国鉄色ボンネット型は、ステンレス車に囲まれる中ひとり異様な貫録を放っている。臙脂とベージュの帯を纏って堂々9両編成が始発駅のホームに佇む姿は、「金沢行急行列車」にふさわしい風格である。側面に整然と並んだ長窓も美しい。乗り込んだモハ489 22は昭和47年製(日立製作所)で、もうすぐ40年になろうかというところ。随所に昭和の面影を色濃く残している。簡易式ではあるものの、ふかふかのリクライニングシートに身を沈めて、高崎までは漫然と過ごす。相当にガタが来ている車両のはずだが、落ち着いた走行を見せ、至って快適。高崎を過ぎると客室内は減光され、独特の雰囲気の空間に変貌する。目を閉じれば、ジョイント音に誘われて深い眠りの底へと急降下である。
気がつくと、直江津である。3時間あまり眠ったことになる。隣には北陸が停車中。話によると、どうやら北陸はジャンパ栓が凍結して長岡での機関車交換に手こずったらしく、能登が先行しているとのこと。直江津を出た列車は快調に飛ばす。4時32分、頸城トンネル内の筒石駅を通過。夜通し煌々と明かりの灯る不気味な不夜城である。梶屋敷を過ぎて電源が切り替われば、程なくして糸魚川に到着。能登に乗るのはこれが最後になろう。辺りには細雪が降っている。
・深雪の大糸線
スパッツを装着したりなどなどしているうちに、大阪からの急行きたぐにが到着。583系の巨体はいつ見ても荘厳である。食料を調達し、始発の南小谷行に乗車。ツートンカラーの115号。まだ夜は明けないが、青みがかった光に雪が照らされている。平岩で下車し、まずは後続の424Dを駅前の鉄橋で撮影。朱色の156号も美しい。
その後は平岩折り返しの糸魚川行で頸城大野へ。今回は平野部での撮影も盛り込んでみようということで、駅裏の雪原を取り入れてみたり、おなじみの平沢第二踏切から針葉樹の廊下を後追いで切り取ってみたり、色々と試みた。国鉄色というのは本当に日本的な風景によく似合った塗色である。単行列車がコトコトと進んでいくのどかな雪国の朝。
午後からは山間部に入る。撮影地の充実している小滝を選んだ。山道は雪が相当に深く、ラッセルで進む。水力発電所が特徴的な小滝の谷。川の上流にはヒスイの産地があるという。俯瞰撮影地までは幸いにも先人の道が開かれていたため、そこを踏襲。だんだんと天候が崩れてきたモノトーンの雪の谷を、ゆっくりと115号が歩く。白い世界に咲いた一輪の花のよう。
夕刻も近くなると雨混じりの雪がしたたか降ってきたので、根知まで歩く予定を変更して列車移動。根知では交換するダイヤだが、糸魚川で接続を取ったためなのかどうやら対向列車は遅れている模様。図らずして国鉄色同士が華やかに対面する。1日4回、毎日当たり前のように行われてきたこの交換の光景もまもなく見納めである。1時間後にも交換があるため、夕方まで粘って今度は踏切から撮影。寒色の世界にもたらされる、束の間の彩り。列車が行ってしまうと、辺りにはスプリンクラーの音が単調に響くのみである。
昭和40年製のキハ52 115を見送り、いよいよ大糸線を去る時が来た。高山本線のキハ58充当列車の発車に間に合うべく、糸魚川まではバスを利用する。この路線は昨夏にも乗ったことがあって、ここにバス停があると分かっていたから良いものの、停留所の標識が雪に埋まっていた。乗客は私のみ。途中で1人乗って来たが、すぐに降りて行ってしまった。地方の路線バスは苦境にあると聞く。470円という運賃も致し方ないのかもしれない。糸魚川からは自由席特急券を買ってはくたかに黒部まで乗車。普通列車に乗り換え、富山に早めの到着である。さて、いよいよ888Dで国鉄色キハ58と対面かと思いきや・・・
・高山本線キハ58
あれっ!? 高岡色なんだけどwww ( ´・ω・`)
今週は国鉄色と聞いていたので期待に胸を膨らませていたものの、どうやら差し替わってしまった模様。萎えたので越中八尾を往復する予定は取り消し、早々にチェックイン。バスと特急を駆使して富山まで急行した意味がなかったという話。まぁこういうこともあるか( ´・ω・`)
何かのサービスでハリー・ポッターが無料で観られるとのことだったので、観てしまった晩。北陸撮影行の1日目はこれにて終了。
写真
1枚目:雪原の駅に停車(@頸城大野)
2枚目:雪の谷を進む(@根知~小滝)
3枚目:華やかなる交換風景(@根知)
2824文字
2/18 → 2/19
上野2333 → 糸魚川445(+4)
東北本線・高崎線・上越線・信越本線・北陸本線611M・601M
急行能登 モハ489 22
2/19
糸魚川604 → 平岩640
大糸線420D キハ52 115
424D撮影
平岩706 → 頸城大野732
大糸線421D キハ52 156
426D・423D・425D撮影
頸城大野1051 → 小滝1103
大糸線428D キハ52 156
427D・430D撮影
小滝1456 → 根知1502
大糸線429D キハ52 115
429D・432D・431D・434D撮影
根知新道1717 → 糸魚川駅前1740
糸魚川バス別所線 長岡22 か 1277
糸魚川1756(+4) → 黒部1820(+1)
北陸本線1018M 特急はくたか18号 サハ682-8001
黒部1832 → 富山1902
北陸本線566M モハ412 101
888D撮影
富山泊
・急行能登
旅立ちは能登である。21世紀の10年目にして未だに残る国鉄色ボンネット型は、ステンレス車に囲まれる中ひとり異様な貫録を放っている。臙脂とベージュの帯を纏って堂々9両編成が始発駅のホームに佇む姿は、「金沢行急行列車」にふさわしい風格である。側面に整然と並んだ長窓も美しい。乗り込んだモハ489 22は昭和47年製(日立製作所)で、もうすぐ40年になろうかというところ。随所に昭和の面影を色濃く残している。簡易式ではあるものの、ふかふかのリクライニングシートに身を沈めて、高崎までは漫然と過ごす。相当にガタが来ている車両のはずだが、落ち着いた走行を見せ、至って快適。高崎を過ぎると客室内は減光され、独特の雰囲気の空間に変貌する。目を閉じれば、ジョイント音に誘われて深い眠りの底へと急降下である。
気がつくと、直江津である。3時間あまり眠ったことになる。隣には北陸が停車中。話によると、どうやら北陸はジャンパ栓が凍結して長岡での機関車交換に手こずったらしく、能登が先行しているとのこと。直江津を出た列車は快調に飛ばす。4時32分、頸城トンネル内の筒石駅を通過。夜通し煌々と明かりの灯る不気味な不夜城である。梶屋敷を過ぎて電源が切り替われば、程なくして糸魚川に到着。能登に乗るのはこれが最後になろう。辺りには細雪が降っている。
・深雪の大糸線
スパッツを装着したりなどなどしているうちに、大阪からの急行きたぐにが到着。583系の巨体はいつ見ても荘厳である。食料を調達し、始発の南小谷行に乗車。ツートンカラーの115号。まだ夜は明けないが、青みがかった光に雪が照らされている。平岩で下車し、まずは後続の424Dを駅前の鉄橋で撮影。朱色の156号も美しい。
その後は平岩折り返しの糸魚川行で頸城大野へ。今回は平野部での撮影も盛り込んでみようということで、駅裏の雪原を取り入れてみたり、おなじみの平沢第二踏切から針葉樹の廊下を後追いで切り取ってみたり、色々と試みた。国鉄色というのは本当に日本的な風景によく似合った塗色である。単行列車がコトコトと進んでいくのどかな雪国の朝。
午後からは山間部に入る。撮影地の充実している小滝を選んだ。山道は雪が相当に深く、ラッセルで進む。水力発電所が特徴的な小滝の谷。川の上流にはヒスイの産地があるという。俯瞰撮影地までは幸いにも先人の道が開かれていたため、そこを踏襲。だんだんと天候が崩れてきたモノトーンの雪の谷を、ゆっくりと115号が歩く。白い世界に咲いた一輪の花のよう。
夕刻も近くなると雨混じりの雪がしたたか降ってきたので、根知まで歩く予定を変更して列車移動。根知では交換するダイヤだが、糸魚川で接続を取ったためなのかどうやら対向列車は遅れている模様。図らずして国鉄色同士が華やかに対面する。1日4回、毎日当たり前のように行われてきたこの交換の光景もまもなく見納めである。1時間後にも交換があるため、夕方まで粘って今度は踏切から撮影。寒色の世界にもたらされる、束の間の彩り。列車が行ってしまうと、辺りにはスプリンクラーの音が単調に響くのみである。
昭和40年製のキハ52 115を見送り、いよいよ大糸線を去る時が来た。高山本線のキハ58充当列車の発車に間に合うべく、糸魚川まではバスを利用する。この路線は昨夏にも乗ったことがあって、ここにバス停があると分かっていたから良いものの、停留所の標識が雪に埋まっていた。乗客は私のみ。途中で1人乗って来たが、すぐに降りて行ってしまった。地方の路線バスは苦境にあると聞く。470円という運賃も致し方ないのかもしれない。糸魚川からは自由席特急券を買ってはくたかに黒部まで乗車。普通列車に乗り換え、富山に早めの到着である。さて、いよいよ888Dで国鉄色キハ58と対面かと思いきや・・・
・高山本線キハ58
あれっ!? 高岡色なんだけどwww ( ´・ω・`)
今週は国鉄色と聞いていたので期待に胸を膨らませていたものの、どうやら差し替わってしまった模様。萎えたので越中八尾を往復する予定は取り消し、早々にチェックイン。バスと特急を駆使して富山まで急行した意味がなかったという話。まぁこういうこともあるか( ´・ω・`)
何かのサービスでハリー・ポッターが無料で観られるとのことだったので、観てしまった晩。北陸撮影行の1日目はこれにて終了。
写真
1枚目:雪原の駅に停車(@頸城大野)
2枚目:雪の谷を進む(@根知~小滝)
3枚目:華やかなる交換風景(@根知)
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