雷鳥を追う Part 2
雷鳥を追う Part 2
雷鳥を追う Part 2
鳩原ループの俯瞰撮影地を諦め切れなかったので、鳩原を後にして小河口に向かうことにした。かつては、特別な構想もないまま気ままに旅程を組み、旅行先でも比較的漫然としていた感がある。中学時代の鉄研旅行ではそれが顕著だった。だが、旅行中の妥協というのは許されざるものであるということを、次第に痛感するようになってきた。妥協とは必ずしも能動的なもののみを指すのではなくて、自らの知らぬ間に勝手に妥協を図っていることもあるから、そういうものも含めていう。今回でいえば「俯瞰は仕方ない」と見逃すことが無意識の妥協であった。「また来れば良い」では、結局いつまで経っても来れない。また仮に来れたにしても、その目的を純粋かつ忠実に達成できるかどうかは非常に疑わしい。旅行、撮影行とはそういうものである。

途中で雷鳥13号の通過時刻となったので、国道の歩道から即席の構図をつくる。水田と小屋の奥、里山を背景にして国鉄色の帯が流れる。どちらかといえば景色を写したような絵となった。国鉄色が自然風景によく調和することを時に思い出さなくてはならないように思う。何より、未だに国鉄色485系が走り回っているというこの様を、撮像素子のみならず目に焼き付けておくことも大切だと感じる。そして視覚、聴覚、嗅覚の合成は、記憶を不朽のものならしめるのではないか。

読みは的中した。至上の喜びを感じる。「火の用心」・・・かつて小耳に挟んだ知識が今まさに生きた感がある。ダメ元での挑戦ではあったが、気がつけば無心に道を登っていた。No.420がもたらした景観は、これまでの苦労を吹き飛ばすに十分な迫力をもって眼前に展開する。ほとんど走りながら登って来たので、体から汗が噴き出す。そして、心地よい風が全身を突き抜け、その汗をさらってゆく。メインとなる雷鳥17号、22号を無事にカメラに収め、小一時間の撮影を楽しんだ。

本来の行程では、新疋田13時10分発の敦賀行に乗ることになっていた。しかしながら興奮のあまり行程を無視してここまで来てしまったため、もはやこれに間に合うのは絶望的。それならば、接続の敦賀13時33分発の福井行に間に合うことも考えてみるが、40分の徒歩では厳しい距離である。タクシーかヒッチハイクになるのかと思いきや、調べてみると幸いにもコミュニティバスが丁度良い時間に運行している。一日三本だというのに、そのうちの一本は小河口13時5分発という、何とも絶妙な時間帯に設定されている。これで敦賀までの足は確保された。

走りに走り、急いで山を下りる。所要10分。これほどまでに早く下山できるとは思ってもいなかったが、とりあえずバスには間に合ったのでよしとする。汗が尋常ではない。上半身に水をかぶったようになってしまった。だが、これで悔いはない。

小河口1305 → 敦賀駅1318
敦賀市コミュニティバス愛発線
汗を処理したと思ったら、鼻血が出てきて大変であった。乗客の一人は運転手と顔見知りのようで、色々と雑談を交わしていた。本数こそ少ないが、地域に密着した輸送が垣間見える。

空は晴れ渡り、太陽が地面を焼く。空気は沸騰しているかのようである。

写真(@敦賀~新疋田)
1枚目:ループ線にさしかかる雷鳥。遠景には若狭湾を望む。
2枚目:上下線が分離し、単線区間のような趣。
3枚目:逆光の山々に抱かれ、国鉄色が滑り去る。

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