夏の大糸線 Part 3
2009年8月22日 鉄道と旅行
国道を引き返し、駅へ戻る。8月の大糸線は、まだまだ暑い。
3月に訪れた時は西側の明星山が雪を冠っていたが、今は景色全体が青々と夏の陽光に輝いている。小滝で降りたのは発電所を入れた有名な構図で再び列車を狙ってみたく思ったからで、大正橋を渡って姫川の対岸へ移動する。後追いで橋梁上の432Dを撮ることになるわけだが、まだ正面には陽が回らなさそうである。
撮影後、根知まで移動する。国道148号線を歩くという行程も3月の時と同じ。大前洞門、城山洞門、大前トンネル、唐沢洞門といったふうに、シェルターとトンネルが連続する区間である。トンネル内には申し訳程度に歩道が敷かれているが、路側帯を歩かざるを得ない区間も多々あり、トラックなどが猛然と脇を通過してゆくのにはなかなか恐ろしいものがある。袴岩までやって来るとすっかり平地に出てきた感が湧く。日差しも西に傾いてきたようで、夕刻の到来を予感させる。ゆっくりと歩いて小一時間で根知に到着。小滝方の踏切には交換を狙うべく既にカメラを構えている方がいらっしゃった。今回は、頸城大野方から国鉄色の離合を捉えてみるとしよう。
まずは糸魚川行431Dが先に入線する。115号。遠目に見る国鉄色というのもまた美しい。森の深緑色が列車をよく引き立ててくれる。続いて、平岩行434Dが背後からやって来る。こちらは朱色の156号。わずかながらの時間だが、両列車は黄昏の根知駅で対面し、やがて離合する。加速の際に双方の屋根から噴き上がる淡い青色の煙が、何とも印象的であった。
バス停を下りしばらく歩いてトンネルをくぐると、平沢第2踏切という場所に到着する。ここは頸城大野を出発してきた列車が一直線にじりじりと向かって来るところを正面から狙える撮影地で、踏切手前の黒い杉林が絶妙な背景を形作っている。林の隙間から顔を出す国鉄色を狙うわけだが、今回はオートに頼っていると、前照灯にカメラが眩惑されたのか、どういうわけか露出が大幅に狂い、暗すぎる絵になってしまった。やはり今まで通りマニュアルで撮るのが面倒でも一番確かな方法といえる。とくに鉄道撮影という特殊な場合ならなおさらである。
10分ほど経てば、今の列車が根知で交換した糸魚川行が逆方向からやって来る。別段構想もしていなかったので何の変哲もない構図だが、車両をメインにして朱色を捉える事ができた。これにて大糸線の撮影は終了である。
暮れなずむ中、頸城大野駅に向かう。よくよく観察してみれば頸城大野周辺は素朴ながらも撮影地に恵まれている。大糸線といえば山岳路線のイメージが強かったため、撮影地は北小谷とか小滝とかを中心に選んでいたのだが、こうして歩いてみると、今さらながら平野部の魅力も再認識させられた感がある。山地、平野、春夏秋冬、様々の表情を見せる国鉄色の聖地。偏重することなく、後悔のないよう、今後も可能な限り足を運び、一回一回の撮影に十全たる準備を行い、一つの撮影行それぞれにこの上ない充実を図っていきたいものである。日没の駅はやたらに虫が多いが、人は一人として来ない。再び本を開いて列車が来るまでの時間をやり過ごす。
能登で到着したのが遥か昔のことのように思えてしまう。それだけに夜行列車での移動は目一杯の時間を提供してくれる。
写真
1枚目:水力発電所の点在する大糸線。小滝川はヒスイの産地でもある(@根知~小滝)。
2枚目:黄昏の駅で国鉄色が離合(@根知)。
3枚目:森を抜けてきた朱色の156号(@根知~頸城大野)。
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北小谷1434 → 小滝1456先ほど撮影した朱色の156号がホームに入って来た。キハ52はその落ち着いた車体デザインからして、日本の田園風景によく合う姿をしているように思う。北小谷を発車すると、先ほどまでカメラを構えていた下寺トンネルや李平の集落を通り抜け、やがて長大な真那板山トンネルに入る。エンジンの轟音と、レールの悲鳴が狭い内壁に反響し、やかましい歌を奏でる。乗客はみな思い思いの時間を過ごしているようだ。今朝降りた平岩を過ぎ、次の小滝で下車することにする。
大糸線429D キハ52 156
3月に訪れた時は西側の明星山が雪を冠っていたが、今は景色全体が青々と夏の陽光に輝いている。小滝で降りたのは発電所を入れた有名な構図で再び列車を狙ってみたく思ったからで、大正橋を渡って姫川の対岸へ移動する。後追いで橋梁上の432Dを撮ることになるわけだが、まだ正面には陽が回らなさそうである。
撮影後、根知まで移動する。国道148号線を歩くという行程も3月の時と同じ。大前洞門、城山洞門、大前トンネル、唐沢洞門といったふうに、シェルターとトンネルが連続する区間である。トンネル内には申し訳程度に歩道が敷かれているが、路側帯を歩かざるを得ない区間も多々あり、トラックなどが猛然と脇を通過してゆくのにはなかなか恐ろしいものがある。袴岩までやって来るとすっかり平地に出てきた感が湧く。日差しも西に傾いてきたようで、夕刻の到来を予感させる。ゆっくりと歩いて小一時間で根知に到着。小滝方の踏切には交換を狙うべく既にカメラを構えている方がいらっしゃった。今回は、頸城大野方から国鉄色の離合を捉えてみるとしよう。
まずは糸魚川行431Dが先に入線する。115号。遠目に見る国鉄色というのもまた美しい。森の深緑色が列車をよく引き立ててくれる。続いて、平岩行434Dが背後からやって来る。こちらは朱色の156号。わずかながらの時間だが、両列車は黄昏の根知駅で対面し、やがて離合する。加速の際に双方の屋根から噴き上がる淡い青色の煙が、何とも印象的であった。
根知新道1717 → 上大野1721鉄道の撮影行を突き詰めていけば自家用車で移動するのが最も効率的ということになるのかもしれないが、列車移動が前提ではそうもいかない。本数は少ないながらも、バスの活用という選択肢が時には非常に奏功してくれる。今回は、ちょうど根知と頸城大野の中間地点付近までバスを利用する。ここでは北陸の国鉄色を追っているという方とお話をする機会があった。
糸魚川バス別所線
バス停を下りしばらく歩いてトンネルをくぐると、平沢第2踏切という場所に到着する。ここは頸城大野を出発してきた列車が一直線にじりじりと向かって来るところを正面から狙える撮影地で、踏切手前の黒い杉林が絶妙な背景を形作っている。林の隙間から顔を出す国鉄色を狙うわけだが、今回はオートに頼っていると、前照灯にカメラが眩惑されたのか、どういうわけか露出が大幅に狂い、暗すぎる絵になってしまった。やはり今まで通りマニュアルで撮るのが面倒でも一番確かな方法といえる。とくに鉄道撮影という特殊な場合ならなおさらである。
10分ほど経てば、今の列車が根知で交換した糸魚川行が逆方向からやって来る。別段構想もしていなかったので何の変哲もない構図だが、車両をメインにして朱色を捉える事ができた。これにて大糸線の撮影は終了である。
暮れなずむ中、頸城大野駅に向かう。よくよく観察してみれば頸城大野周辺は素朴ながらも撮影地に恵まれている。大糸線といえば山岳路線のイメージが強かったため、撮影地は北小谷とか小滝とかを中心に選んでいたのだが、こうして歩いてみると、今さらながら平野部の魅力も再認識させられた感がある。山地、平野、春夏秋冬、様々の表情を見せる国鉄色の聖地。偏重することなく、後悔のないよう、今後も可能な限り足を運び、一回一回の撮影に十全たる準備を行い、一つの撮影行それぞれにこの上ない充実を図っていきたいものである。日没の駅はやたらに虫が多いが、人は一人として来ない。再び本を開いて列車が来るまでの時間をやり過ごす。
頸城大野1933 → 糸魚川1941すっかり夜である。ホームの灯りに照らし出された国鉄色は、昼間とは異なった独特の趣を見せる。窓から漏れる車内の灯りには、冷たい闇の水田に比べると随分と温かみを感じる。心地よい振動に揺られること8分ほど、ようやく糸魚川に戻る。
大糸線435D キハ52 115
能登で到着したのが遥か昔のことのように思えてしまう。それだけに夜行列車での移動は目一杯の時間を提供してくれる。
写真
1枚目:水力発電所の点在する大糸線。小滝川はヒスイの産地でもある(@根知~小滝)。
2枚目:黄昏の駅で国鉄色が離合(@根知)。
3枚目:森を抜けてきた朱色の156号(@根知~頸城大野)。
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