夏の大糸線 Part 2
2009年8月22日 鉄道と旅行
さて、撮影地を移動する。
この駅で降りるのはこれで3回目である。最初の時はあまりの雨に閉口してしまったのであるが、幸いにも今回は天気に恵まれている。3月に訪れた外沢トンネル上の俯瞰撮影地に向かった。
ところがその途中、駅からまだほとんど離れないうちに、駐車場のようなスペースを見つけたので少し下りてみると、手前の小さな水田を絡めた構図をつくれることに気が付いた。ここは「柔軟な対応」の実践ということで、この位置で下り列車を狙ってみるとする。やがて現れた425Dは、夏らしい風景の中を駆け抜けてゆく。
この後は2時間近くも暇なのでとりあえず駅の待合室へ戻る。たまには本でも読んでみようと、春に買っておいて結局放置していた『思考の整理学』を開いてみる。色々の人が薦めるということで手にしたわけだが、たしかにこの本は、むろん全てではないけれども、共感する部分がなかなか大きい。抽象的だが的確な比喩も洗練されている。そしてあくまでそういった領域での議論にほぼ終始しているというのもミソ。個々の思考それ自体について考えているという本の性質上、そうならざるを得ないともいえる。あとは持参したゴム弓を適当に弯いてみたりする。待ち時間を有効に活用した感があって実に満足。さて、そろそろ列車が戻って来る。
北小谷駅のすぐ北側には下寺トンネルという短いトンネルがあり、次はここで上り列車を狙ってみるとする。いよいよ日も高くなり、光線は良好。鬱蒼たる木々の中にぽっかりと口を開いたトンネル、いかにも夏らしい。428Dの警笛がこだまする。やがて姿を現した国鉄色は、緑の世界に鮮烈なコントラストをもたらす。
その後は李平の集落まで歩く。地形図上では大した距離ではないように見えるが、実際に歩いてみると高低差が激しいため山道の登り下りを余儀なくされる。しかしながら坂を登り切った時の眺めは実に爽快で、広がる水田と青空は絵に描いたような高原の町を連想させる。吹き抜ける風もいくぶんか心地よい。折り返し427Dは、願わくば植物と絡めて撮影してみようと思っていたわけだが、集落を奥まで進んでいったところにはちょうどヒマワリとコスモスが咲いていたので、列車を背景に据えることにした。国鉄色に惹かれる理由の一つには、自然風景との一体感が挙げられよう。
汗が甚だしい。今回の撮影行には2リットルの水を用意して臨んだのだが、今までだけでもう半分以上飲んでしまった。太陽は南中時刻を過ぎたが、気温はいよいよこれからピークを迎える。とりあえず汗を流すべく、対岸の「道の駅小谷」まで赴き、温泉に浸かるとする。深山の湯というかけ流しの温泉で、実に快適であった。その後は昼食をとる。過酷な撮影行には嬉しい休息である。
北小谷周辺での撮影は、430Dで終了する。道の駅から国道を北上してしばらく行ったところから、李平集落を背景に進む列車を側面から捉えることができる。朱色の156号は豆粒のような姿で、大きな画面の中をゆっくりと進んでゆく。
写真
1枚目:夏の谷をゆくキハ52(@中土~北小谷)
2枚目:国鉄色が映える(@平岩~北小谷)
3枚目:ヒマワリとコスモス。夏も終盤(@北小谷~平岩)。
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平岩853 → 北小谷904国鉄色はその姿だけで絵になるから、入線なども丁寧に撮影してみる。これほどまでにそそられてしまうとは、この塗色の秘めた魅力たるや計り知れない。北小谷は隣の駅であるが、新潟と長野の県境をまたぐということもあって、10分以上を要する。轟音を上げながら長いトンネルを抜ければ、まもなく北小谷である。乗ったら撮れない、撮ったら乗れない。撮影行においてこれは当然の事実ではあるが、少なくともここ大糸線の国鉄色気動車は、乗るのもまた撮るのと同等かそれ以上の楽しみであることは間違いなかろう。何となれば、3両残された老兵キハ52、その最後の活躍の地である。
大糸線426D キハ52 115
この駅で降りるのはこれで3回目である。最初の時はあまりの雨に閉口してしまったのであるが、幸いにも今回は天気に恵まれている。3月に訪れた外沢トンネル上の俯瞰撮影地に向かった。
ところがその途中、駅からまだほとんど離れないうちに、駐車場のようなスペースを見つけたので少し下りてみると、手前の小さな水田を絡めた構図をつくれることに気が付いた。ここは「柔軟な対応」の実践ということで、この位置で下り列車を狙ってみるとする。やがて現れた425Dは、夏らしい風景の中を駆け抜けてゆく。
この後は2時間近くも暇なのでとりあえず駅の待合室へ戻る。たまには本でも読んでみようと、春に買っておいて結局放置していた『思考の整理学』を開いてみる。色々の人が薦めるということで手にしたわけだが、たしかにこの本は、むろん全てではないけれども、共感する部分がなかなか大きい。抽象的だが的確な比喩も洗練されている。そしてあくまでそういった領域での議論にほぼ終始しているというのもミソ。個々の思考それ自体について考えているという本の性質上、そうならざるを得ないともいえる。あとは持参したゴム弓を適当に弯いてみたりする。待ち時間を有効に活用した感があって実に満足。さて、そろそろ列車が戻って来る。
北小谷駅のすぐ北側には下寺トンネルという短いトンネルがあり、次はここで上り列車を狙ってみるとする。いよいよ日も高くなり、光線は良好。鬱蒼たる木々の中にぽっかりと口を開いたトンネル、いかにも夏らしい。428Dの警笛がこだまする。やがて姿を現した国鉄色は、緑の世界に鮮烈なコントラストをもたらす。
その後は李平の集落まで歩く。地形図上では大した距離ではないように見えるが、実際に歩いてみると高低差が激しいため山道の登り下りを余儀なくされる。しかしながら坂を登り切った時の眺めは実に爽快で、広がる水田と青空は絵に描いたような高原の町を連想させる。吹き抜ける風もいくぶんか心地よい。折り返し427Dは、願わくば植物と絡めて撮影してみようと思っていたわけだが、集落を奥まで進んでいったところにはちょうどヒマワリとコスモスが咲いていたので、列車を背景に据えることにした。国鉄色に惹かれる理由の一つには、自然風景との一体感が挙げられよう。
汗が甚だしい。今回の撮影行には2リットルの水を用意して臨んだのだが、今までだけでもう半分以上飲んでしまった。太陽は南中時刻を過ぎたが、気温はいよいよこれからピークを迎える。とりあえず汗を流すべく、対岸の「道の駅小谷」まで赴き、温泉に浸かるとする。深山の湯というかけ流しの温泉で、実に快適であった。その後は昼食をとる。過酷な撮影行には嬉しい休息である。
北小谷周辺での撮影は、430Dで終了する。道の駅から国道を北上してしばらく行ったところから、李平集落を背景に進む列車を側面から捉えることができる。朱色の156号は豆粒のような姿で、大きな画面の中をゆっくりと進んでゆく。
写真
1枚目:夏の谷をゆくキハ52(@中土~北小谷)
2枚目:国鉄色が映える(@平岩~北小谷)
3枚目:ヒマワリとコスモス。夏も終盤(@北小谷~平岩)。
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