旅程を思い立ったのは、6月の半ば頃ではなかろうか。数々の撮影願望や乗車願望は常に混合気体のように頭の中をめぐりめぐっているのだが、今回はその核心ともいえる部分が一挙に、しかも極めて濃厚に、旅程へと凝縮する過程を見た感がある。
大糸線の国鉄色気動車、北陸本線の国鉄色雷鳥、孤高の寝台特急日本海。まず初めに凝縮したこの三本の柱を中心として、旅程に肉付けがされていった。効率的な撮影には夜行列車での移動が欠かせない。能登に、このさい折角ならグリーン車に、乗ろうではないか。これで大糸線をまる一日楽しめる。では北陸本線はどうか。きたぐにがある。くたびれた夜行急行の雰囲気を味わうべく、今度は自由席にしてみよう。ただ、夜行二連泊は体力を犠牲にする行程でもある。敦賀では一泊し、さらに北陸本線を撮り込むとする。そして特急日本海。ブルートレインというだけで今や貴重な存在である。かつては急行銀河にも連結されていたプルマン式A寝台はさらに貴重である。今回は、このA寝台で下り日本海の夜を堪能しよう。折角遠方まで赴いたのであるから、翌日の帰路は適度に撮影も盛り込みながら只見線経由で帰京してみる。これで大枠は完成、あとは綿密な予習を残すのみとなった。
ただ、とくに8月は予定を詰めすぎたために、この予習が思うように進まなかった。幸いにもダイヤグラムは前日までに完成したものの、具体的な行程自体は、結局、出発当日の昼に突貫作業で作り上げるという異例の状況となった。旅行の規模が大きいほど、予習不足が致命的となるのは周知のことであるが、ひとまず終わったことには終わったのでこれはよしとする。本当に時間ぎりぎりであった。急いで荷造りを済ませ、いざ出発である。
長い一日の始まり。
写真(@上野)
1枚目:特急北陸。発車の時を待つ。
2枚目:急行能登。489系国鉄色ボンネットの貫禄。
1555文字
大糸線の国鉄色気動車、北陸本線の国鉄色雷鳥、孤高の寝台特急日本海。まず初めに凝縮したこの三本の柱を中心として、旅程に肉付けがされていった。効率的な撮影には夜行列車での移動が欠かせない。能登に、このさい折角ならグリーン車に、乗ろうではないか。これで大糸線をまる一日楽しめる。では北陸本線はどうか。きたぐにがある。くたびれた夜行急行の雰囲気を味わうべく、今度は自由席にしてみよう。ただ、夜行二連泊は体力を犠牲にする行程でもある。敦賀では一泊し、さらに北陸本線を撮り込むとする。そして特急日本海。ブルートレインというだけで今や貴重な存在である。かつては急行銀河にも連結されていたプルマン式A寝台はさらに貴重である。今回は、このA寝台で下り日本海の夜を堪能しよう。折角遠方まで赴いたのであるから、翌日の帰路は適度に撮影も盛り込みながら只見線経由で帰京してみる。これで大枠は完成、あとは綿密な予習を残すのみとなった。
ただ、とくに8月は予定を詰めすぎたために、この予習が思うように進まなかった。幸いにもダイヤグラムは前日までに完成したものの、具体的な行程自体は、結局、出発当日の昼に突貫作業で作り上げるという異例の状況となった。旅行の規模が大きいほど、予習不足が致命的となるのは周知のことであるが、ひとまず終わったことには終わったのでこれはよしとする。本当に時間ぎりぎりであった。急いで荷造りを済ませ、いざ出発である。
上野2333 → 糸魚川441上野であけぼのと北陸の発車を見送った後、能登に乗車する。ボロボロの国鉄色489系が入線してきた。こういった列車が未だに残っているということに驚きを感じる。ホームライナーのヘッドマークの下には、能登の表示が光っていた。わざわざ作業員が出てきてマークを取り外すという光景もどこか前近代的である。だがそれがまた良い。やがて列車は上野を静かに発車。大宮、熊谷と停車してゆく。高崎線内は車窓を眺めてぼんやりと過ごしていた。今日は金曜日ゆえ高崎で降りる客が多いから、減光は高崎を過ぎてから行う旨の放送があった。下り能登はホームライナーとしての役割も一応担っている。高崎で先行のムーンライトえちごに追いつく。今や夜行快速も臨時列車。国鉄色同士が夜のホームに対面する。高崎を過ぎればいよいよ上越線である。カメラのバッテリーが意外ともたないことが判明し、慌てて洗面所で充電をしていたのだが、その完了を待たずして眠りに落ちてしまった。座席のリクライニングは非常に深く、ほぼ横になることができ実に快適。グリーン車らしく通路には赤絨毯が敷かれ、橙色の常夜灯が落ち着いた雰囲気を醸し出している。小窓がずらずらと並び、客室の仕切り扉のガラス窓には「グリーン車」の文字が腐食される。国鉄時代の姿がほぼそのまま保存された車両のようである。ふかふかの座席に身を沈め、遺産ともいえる車内で一夜を過ごし、目覚めると4時20分。空は闇からかすかに解放され、わずかながら青みを帯びてきた。間もなくして糸魚川に到着である。
東北本線・高崎線・上越線・信越本線・北陸本線611M 急行能登 サロ489 23
長い一日の始まり。
写真(@上野)
1枚目:特急北陸。発車の時を待つ。
2枚目:急行能登。489系国鉄色ボンネットの貫禄。
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